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今日のネタは数ヶ月前にメンバーからの質問に対して私が返した返信です。今回の掲示板掲載にあたりマイルドで短く(笑)してあります。
注・この内容は完全に私個人の感覚であり、違う考え方の人も多いと思いますが、そんな人は「こいつ何もわかってねぇな」と軽く流してもらえるとありがたいです。
内容はチェーンルブについてです。 [注・今回ベース素材の話もするので紛らわしくならないように製品としてのチェーンオイル自体をルブと書きます。オイルという表記はベース素材の呼び名としてつかいます]
質問内容は【kanさんはどんなチェーンルブがオススメですか?種類が有りすぎてわかりません!】というものです。
結論から先に書くと、私は【潤滑性能や耐久性、耐水性は多少低くても扱いやすく落としやすいルブ!】をオススメしています。
私は一般サイクリストには【潤滑性能が高く、簡単に落ちないタイプのルブ】はオススメしていません。これは多くのショップや有名レーサーの意向とは全く違う方向性かと思いますが今回は忖度無しの内容です!
私は既存のルブで一番軽いと思われるフィニッシュラインのワンステップ(青)を使っています。 多分ショップでこれを使っているというと「そんなのはダメだこっちを使え」といわれるでしょうが、かなりの種類のルブを使ったなかで、これがダントツで使いやすいんだから仕方ないです。
これは洗浄成分入りのルブで雨に対しては弱く、潤滑性能はそれなり、耐久性もさほどないのですが、重ね塗りしてさっと拭くだけで汚れは落とせるし、そのまま走り出せます。 また長期間自転車に乗らない場合の錆び止め、ルブ固着も殆どないです。 またルブを塗布してからの待ち時間がゼロなのもグッドで、マトリックスパワータグのメカニックをしていた事もあるメイトヒロさんも使っています。 雨のライドの時にはウエット(緑)やセラミックウエット(金)を上塗りしています。(違う種類上塗りは普通は推奨されませんが雨の時に細かい事は気にしないです)
https://youtube.com/watch?v=mzxjJfE-yxc&si=hScxcz8_sSM94yBh
さて本題です。 以下、種類を分けて少し詳しくみていきます。
まず説明の都合上、ルブの種類を仮に以下の分類で分けます。
・ドライタイブ ・ウエットタイプ(ハーフウエット含む) ・極圧添加剤タップリ入りウエット ・ワックスタイプ(オイルとのハイブリッド含む)
先ずはドライタイプからです。
いきなりびっくりするかもしれませんがドライタイプのルブはオイルではなくグリスをベースにしています。
グリスは常温や低温で半固形になるのでドライルブと呼ばれます。ドライルブは粘度が低く汚れにくいのですが、定着性が低いので落ちやすいです。 また潤滑性能や耐久性、耐水性も他のタイプに比べて低い傾向にあります。
私の認識では潤滑性能が高い方からワックス>極圧ルブ>ウエットルブ>ドライルブです。 これだけみると、ドライタイプを使うメリットはない様に感じてしまいますが、それはカタログスペックだけをみた場合です。
ドライタイプ最大のメリットは扱いやすさです!気温に影響されにくくオールシーズン使えて、メンテナンスが容易で価格もリーズナブルです。
特にメンテナンス性能の高さは群を抜いています。 どんなチェーンルブでもチェーンのコマの中やプレートの隙間にルブは入り込み膜をはります。 実はチェーンが黒くなっていないから汚れていないという訳ではなく、固まったルブの中にチェーンやスプロケットの削りカスや小さな砂等は入り込んでいて、そのまま使っているとルブは研磨剤になってしまいます。 重ね塗りOKというものもありますがチェーンのコマの中に入っている削りカスはそのままで塗る訳だから個人的には落とした方が良いとは思っています。 例えば極圧添加剤タップリ入りのウエットルブは一度つけると数千キロは楽に持ちます。しかしルブが持つ事とルブを落として洗浄する事は別です。
次にウエットタイプの説明です。 殆どのウエットタイプやハーフウエットタイプはグリスではなくオイルがベースになっています。 ウエットタイプはドライタイプに比べて潤滑性能や耐久性が高く、落ちにくいのですが気温による影響を受けやすく低温では糸を引いて使い物にならなくなる場合があります。
またウエットタイプのチェーンルブに関しては粘度が高いので汚れを巻き込みやすく、短いサイクルでのチェーンクリーニングが必要となります。 雨にもそれなりに強くロングライドイベントの途中で降られる様な軽い雨くらいなら問題なく持ちます。これが持たない様な雨なら走らない方が良いという認識です。
雨に強いとはいえディグリーザーや洗剤を使えばしっかり落とす事もできるのが良いです。
また潤滑性能自体はドライタイプより高いので気温が高ければ普段使いも出来ますが、ライドから帰って来たらしっかり拭くのと500〜1,000キロくらいでは中までしっかり落として塗り直して下さい。 ドライにせよウエットにせよ最高の性能をだす場合はしっかり落としてから塗り直しましょう。
ただし緊急の場合はドライタイプの上から塗ると耐水性が向上するのでオススメします。(ただし帰ってきたらしっかり落としてね!) ハーフウエットタイプのルブもオイルタイプですが、粘りけを少し取って軽くした代わりに雨で落ちやすくなっています。
次に極圧添加剤タップリ入りルブを解説します。
極圧添加剤入りルブとは高い圧がかかっても潤滑皮膜を維持出来る様にオイルに極圧添加剤を入れて性能改善されたルブです。
極圧添加剤は金属と反応して強力な膜をつくるのでとても落ちにくく高い潤滑性能を発揮出来る様にする添加剤です。 その為に雨でも全く落ちないし、気温が高ければ極めて高い潤滑性能を発揮します。
ここまで読むとこれが一番良いと思ってしまいます。 極圧添加剤を入れただけでこの性能が上がる訳ですから簡単で、どのメーカーもやりたくなります。
しかしこのメリットがデメリットにもなります。 極圧添加剤入りルブは簡単には落ちない事と金属と反応して強力な皮膜をつくる事自体がメリットでもありデメリットにもなるんです。
チェーンやスプロケットなどは金属です。 これらは当然すり減っていく訳ですが、削れた金属と極圧添加剤が反応して汚れが固まって落ちなくなってしまうんです。 極圧添加剤入りルブを長期間クリーニング無しに使っているとチェーンリングの歯やスプロケットの歯等に強力な皮膜汚れがついて固まってしまいます。 その固さは金属そのものでクリーニングケミカルでも全く落ちません。 カッターの歯が立たないレベルの固さです。
抵抗は低いしどんな条件でも最後まで切れないから、毎回帰ってきたら直ぐにしっかり洗浄する様な人には使いやすいかもしれませんね。
最後にワックスタイプです。 ワックスタイプを使う為にはついている汚れやルブを完全に抜いてからワックスを食いつかせます。(完全にというのがポイントです)
詳しい説明は省きますがワックスとはスキーのワックスみたいなものでチェーンをコーティングする物だと思って下さい。
ワックスタイプは抵抗が極めて低く、雨にも強く、汚れにくいけど下処理に手間と時間がかかります。またワックスは固形なので剥がれた場所は錆びやすいですし、固まったワックスカスの除去にはかなり苦労するはずです。
専用のディグリーザーなら大丈夫かもしれませんが、プレートの間やコマの中は中々難しいはずです。また使用温度が決まっているワックスも多いので注意は必要です。
私は詰まったカスの落としにくさと独特の匂いが嫌いで使わなくなりました。
中にはワックスとチェーンを煮詰めて付着させるタイプもあり、これはとても面倒で一般サイクリストには全くむかないと思います。
余談 今、潤滑性能だけを求めるならセラミックスピードのUFOドリップの新型かアブソリュート ブラックのグラフェンルブ、マックオフのルーディクロスAF、モルテン スピード ワックス+レースパウダー、シルカのシークレットワックス、スクワートのチェーンルブあたりが候補です。 速さを求めるならこのあたりを使わない理由はありません!
私は求める物が違うのでこれらは使わないですが、仮にどうしても性能が必要だというなら、マックオフのルーディクロスAFを選ぶと思います。
ただしイネオスも使っているルーディクロスAFは50mlで約1万とぶっ飛んだ価格です。またUAEやユンボが使っているアブソリュートブラックのグラフェン ルブも140mlで2万です(笑)
ワールドツアーチーム使用率No.1メーカーはモルガンブルーで次点はマックオフで他にはアブソリュートブラックやフィニッシュライン等もあります。 メーカー名だけで商品名を書いていないのはプロ供給オイルは多分市販品とはちがうからです(笑)
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